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ISOは貴社にとって有益か?

ISOのコンサルタントを実施していますので、
ISOの認証取得をお勧めすると、
それは当社にとって有益ですか?との問いが返ってきます。
当然だと思います。
その答えを出すのはそれぞれの企業様ですが、
考え方の方向性を以下に示しますので参考にして下さい。


1.ISOの認証取得ということの意味
ISOというのは、品質保証の為にこれだけは最低限実施しなさい
という要求事項を持っています。
ですから認証取得するということは、これらの要求事項に対応して、
システムを作り、そのシステムに基づいて、会社の運用をすることになります。
そして認証ですから、誰かがその運用状態を見て適合しているかを、
判断することになります。この判断をするのが審査員です。
そして適合していると認められれば認証登録証が出されて、
その企業は、ISO9001認証取得企業になります。

その企業にはその後毎年、審査員が訪問して、
要求事項が正しく運用されているかを審査しに来ます。
そしてその審査員が要求事項に適合していないと判断すれば、
不適合という指摘を受けます。その指摘にキチン対応しないと、
認証取得は取り消されることになります。
これが認証取得ということの意味です.


2.認証取得企業だと何が得するのか?
ISOが日本でスタートした時に、土木、建設業の中小企業が、
この認証取得を取る為に大騒ぎした時期が有ります。
私も当時はそのお手伝いをさせていただきました。
土木、建設業の中小企業は、国が実施する様々な公益の仕事を請負います。
その仕事を請け負う為には、入札という仕組みがあり、
入札権のある企業が見積を出しあい、競争してその仕事を受注することになります。
一時その入札条件としてISO9001 の認証取得企業となった時期がありましたので、
何しろISOの認証証が欲しいということで多くの中小土建業が、
ISO9001の認証取得に取り組みました。
認証取得を大目標に掲げたこの活動の一部では、
ISO活動の大事な点を見失う事になった側面も有ります。

もう一つ自動車産業では、自動車部品大手の部品メーカー
例えばデンソー、アイシン精機、カルソニックカンセイ(今は名前が変わりマレリ)等
の自動車部品大手はIATFという自動車部品メーカー版ISOを持っています。
このIATFの要求事項には、協力企業(下請け企業)では最低限ISO9001 の認証取得した
企業で無くてはならないという要求事項が有ります。
ですから自動車産業の中小企業の多くはISO9001認証している企業が多いのです。
こうした企業様では、顧客の要求になりますので、
必ずISO9001 の認証が必要になってきます。

3.認証取得から得られる便益
上記の様に顧客から要求がある場合はそれに取り組まざる得ませんが、
ここでのアドバイスは、顧客からの直接要求が無い企業が
ISOに取り組むの?否かを判断する場合です。
その方向性を示すのがこの文書の目的です。

■まず大事な点はISO9001を理解しなくては判断できません!!
ISO9001を理解するとは、その要求事項をまず理解することが大事です。
以下その全体を出来るだけ簡単に説明します。

4.ISO要求事項の骨子
品質マネジメントシステム要求事項の全体像を説明します。
ここでは全体像と要求事項の概要を説明します。

■まずこの要求事項の構造です。
-序文があり 
-次に要求事項が続きます。1章から10章まで有ります。
1章から3章までは
適用範囲、引用規格、用語及び定義です。
4章から10章が要求事項になります。

■要求事項

-4章 組織の状況 :ここでは自分たちの組織の状況として、組織の内部、外部の取り巻く状況等をよく理解しなさいという要求です
 4.1 組織及びその状況の理解
    ここでは内部の課題、外部の課題を明確にしなければならない➡これが要求事項です。
    経営管理者なり経営者が中心となると思いますが、従業員の意見も聞きながら、自分たちの会社の問題点等課題は何?
    内部の課題は何? 外部の課題は何?
これを考えて整理します

 4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解
    利害関係者というと難しいですが、仕事上で関係する人たちや組織ということです。
    顧客、従業員、協力企業様、公的機関、地域住民等です。
    そうした人たちのニーズ(望んでいること)や期待を理解しなさい ➡これが要求事項です。
 4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定
   上記の課題やお客様や従業員等・・・のニーズや期待を把握した中で、
   どういうことをカイゼンしたり、取り組んでいくのかを決めなさい➡これが要求事項です。
 
  ISOというのは、こんなことを要求しているのです。
  これをイメージして、少し難しそうだが、こんなことを考える会社になったら
  会社としての体質強化にもなるし、良い会社にもなりそうだと、思えるところがISOからの便益です。
  要求事項を理解して、自分たちの会社の利益になりそうだと想像する事が
  出来るかどうかです。それが想像できれば便益があると思います。
  入口のところですが、そういう風に考える事が大切だと思います。

 4.4  品質マネジメントシステム及びそのプロセス  これが4.4のタイトルとなります。
    要求事項は4.4.1からで記述されています。

  4.4.1 組織は、この規格要求事項に従って、
必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む、
     品質マネジメントシステムを確立し、実施し、維持し、かつ継続的に改善しなければならない。
     組織は、その品質マネジメントシステムに必要なプロセス及びそれらの
組織全体にわたる適用
     決定しなければならない。また、次の事項を実施しなければならない。

    a)これらのプロセスに必要なインプット、及びこれらのプロセスから期待されるアウトプットを明確にする
    b)これらのプロセスの順序及び相互関係を明確にする
    c)これらのプロセスの効果的な運用及び管理を確実にする為に必要な判断基準及び方法を決定し適用する。
     以下、省略  規格要求事項を参照してください。
    
    この要求事項がプロセスアプローチと言って、この要求事項の大事な部分です。
    この意味を理解することが重要です。
    まず、品質マネジメントシステムは会社を改善するための道具です。
    だから、どんな改善でも、まずは現状把握すると思います。
    品質改善であれ、コスト改善であれ、生産性改善であれ、改善活動のスタートは現状把握だと思います。
    この現状把握が大事なのです。これが基本です。
    そしてこの現状把握をするときに、プロセスという単位で考える、それがどのように繋がっているか、
    どのように相互に関係しているのかを?プロセスという単位で現状把握するのです。
    それがプロセスアプローチという考え方です。
    プロセスがどのように繋がっているか?それは相互にどのような関係があるのか?
    会社全体の現状把握をするのが、プロセスアプロ―チです。
    これが大事です。改善活動には、現状把握が大事です。
    これがこの要求事項の意味です。
    
➡次回に続きます。