要求事項 |
潜在的故障モード |
Φ5の穴をあける |
Φ5の穴ではない |
穴の位置は縦センター |
穴の位置は縦センターにない |
穴の位置は端から10mm |
穴の位置は端から10mmにない |
穴にバリ無きこと |
穴にバリがある |
外周にキズなきこと |
外周にキズがある |
表面にキズなきこと |
表面にキズがある |
適切なポンチで |
ポンチの切り刃が摩耗している |
適切なスピードで |
スピードが遅い |
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![]() |
■FMEAとは ・Failure Mode and Effects Analysis (故障モード影響解析手法)の略語。 ・IATFコアツールの代表的なものであり、最も重要です。 ・IATFではDFMEA(設計FMEA)とPFMEA(工程FMEA)があります。 ・再発防止という考え方が有りますが、これは一度発生した故障や様々な トラブルを2度と発生させない為の考え方、手順等を体系化したものです。 ・これに対して未然防止手法はまだ発生した事のない故障や様々なトラブル を予想し、未然に防止しようとするのが未然防止手法です。. ・FMEAは未然防止手法です。製品及びプロセスの開発プロセス全体を通して 潜在的問題について、考慮し、対処していることを確実にする為の解析手法 です。 ■潜在的問題について対処するとは?
![]() ・潜在的問題について、考慮し、対処していることを確実にする為には FMEAの対象の構造、原理原則を詳細に理解することです。 ・上記は工程の一つの設備構造を表したものにすぎません。しかし、実際の 工程はシリンダーを動かす為にエアー供給がされてきます。 更にそのエアーはエアー配管があり、そのエアーは更に工場の中を配管 されている工場全体のエアー配管があり、更にその先は工場全体のエアー を供給するコンプレッサーに繋がってきます。 ・だからFMEAを実施する際は、FMEAで解析する範囲を明確にする必要が有 ります。何を含み何を除外するかは大切なマネジメントで有り、センスが問わ れる事になります。 ・その為には全体としてどんな工程があるのかを明確にします。 適用範囲の明確化の為に自社工程と外注工程を明確化します。 ![]() 1.自社で顧客まで部品を届けるのであれば自社のPFMEAに輸送が入ります。 2.サプライヤー工程はPFMEAを別途実施します。 サプライヤーが自社に届けるのであればサプライヤーのPFMEAに 輸送が入ります。 3.自社でサプライヤー部品を保管するのであれば 保管も自社のPFMEAに入れます。 その際に受入れ検査を実施するのであれば、 受入れ検査を自社のPFMEAに入れます。 4.自社でもサプライヤーでも構内運搬はPFMEAの範囲です。 5.ユーティリティ管理も入れていきます。 6.また、段取り替えなども自社、サプライヤーのPFMEAに入れます。 ![]() ・ ■FMEAの帳票はどのように機能するか? これが工程FMEAの帳票です。 ![]() ■それではここで工程FMEAの書き方を説明します。 上記の帳票はFMEAの第4版のフォーマットです。これで説明していきます。 FMEAの最新版は第5版ですが、基本的なロジックは一緒です。 後半では4版と5版の内容の違いを解説していきます。 1.まず基本的な考え方 様々な部品は工程1で第一番目の加工をして、 そして工程2で工程1で加工された製品を工程2にインプットし 工程2で第二番目の加工をします。 複雑な部品になれば、いくつもの工程を経て、製品が完成していきます。 工程FMEAは工程毎に不良が出ない管理を確実にする手法です。 工程毎に解析を進めていきます。これが一つの特徴です。 上の帳票の最初の列は工程ですから、 最初に対象にする工程名を書き、 何をする工程なのかを簡単に書けば良いです。 ![]() 2.次に各工程での良品条件を明確にします。 それが上の帳票で要求事項と書いてあるところに その工程での良品条件を書いていきます。 下記にあるようにあるべき姿の明確化です。 ![]() 下記の様に工程1からアウトプットされた製品の要求事項を明確にする ![]() 上記の帳票で要求事項の所にこれを記入します。 これで製品の要求事項が明確にされます。 またもう一つの視点として、プロセス要求事項も出していきます。 例えばφ5の穴をあけますが、その時のドリルの回転数は何万回転で 切削油の供給は加工点に対して毎分何リットルの何々油を注いでいく。 これがプロセス要求事項です。 これらを上記で表した要求事項の欄に記入していきます。 これがまず第一ステップです。 3.更にこの後、潜在的故障モードをこの要求事項から出していきますが、 これを潜在的故障モードの列に記入していきます。 潜在的という言葉が何か難しそうですが、これは最初にも述べていますが、 FMEAは過去に発生した故障を2度と発生させない手法ではないのです。 過去に発生したこともないものを予想して予防していく手法なのです。 だから潜在的という言葉を使うのです。過去に発生した故障であれば、 顕在的モードですよね! 4.次に潜在的故障モードはどのように出してくるのかということですが、 これは簡単です。潜在的故障モード=要求事項が満たされない姿です。 だから要求事項を反転してあげれば良いのです。 ![]() だから故障モードは ・φ5の穴ではない ・穴の位置は縦センターにない ・穴にバリがある となります。 2023-03-08 Amemiya ![]() ![]() 2023-04-05 Amemiya 5. 潜在的故障モードの明確化 潜在的故障モードは,要求事項が達成できない姿 ここでは潜在的故障モードは、過去の発生したものも含めて 出して行きます。過去に発生したものは対策されている訳ですが、 その対策が今でも有効に機能しているかも含めて、 対策の継続的な有効性もここでは確認する形になります。 更にこれまで発生したことのない故障モードに対しても どんな管理がされているかを確認する形になります。 FMEAは発生した事のない故障モードに対して未然防止をします。 更に、過去に発生した不良の再発も未然防止する形になります。 潜在的故障モードは、加工のメカニズムから発生する、現実的な 潜在的故障モードである方が望ましい。 ある製品は直径100㎜、厚さ10㎜である金属製品である。 そして2個のφ5の穴が有って、その位置が定められている場合、 その製品のあるべき姿を正しく定義する必要がある。 その製品の使われ方によって様々な良品条件がある。 穴の垂直度も問題になる場合もあるし、 外周のエッジのRの程度も、表面の荒さ、傷、外周の表面粗さ等 も問題となる製品もあるかもしれない。 過去トラで発生した不良は当然含まれてくるが、 それだけでなく、製品のあるべき姿(良品条件)から、 過去に発生していない故障モードも挙げる必要がある。 この後の潜在的故障影響を考える場合に、 その不良内容の程度によって影響する範囲が変化してくる。 そして、その不良内容の程度は、加工メカニズムによって 作られる可能性のあるズレである。 大きいズレは工程内で発見されるかもしれないが、 小さいズレの場合顧客によって発見される場合もある。 6. 潜在的故障影響の特定 前項で、特定された故障モードによって、 自社の工程内、顧客の工程内、エンドユーザーに どのような影響が出るかです。 それは厳しさランクで評価され高い程影響が大きい。1から10 そのランク付けは自社の工程内、顧客の工程内、エンドユーザ― 等の場合、そのランクは最も高い値によって規定される。 ランク付けは一つの工程FMEAの中での相対評価である。 それによって対策の優先順位がきまってくる。 7.潜在的故障原因の特定 故障原因の特定が難しくそして大事である。 故障原因の特定をどう考えるかであるが、 装置等のメカニズム、加工原理の理解が大事である。 ![]() 故障原因の特定をどう考えるかであるが、 要求事項は穴位置は縦センターと言っている。 上記の穴位置を定める為に関連する要素は何かを考える必要がある。 それは上記の平面図から考える事が出来る。 製品はセンターにある円盤である。そこに穴が空いている。 上記の平面図では一つ穴が明いている。穴位置づれ、 縦センターからのズレが故障モードである。 この絵から考える事が大事である。 シリンダーが両サイドから製品である円盤を定位置に押さえ、 そしてその押さえた円盤に穴を明ける。 ここでは穴はどのように明けるかのメカニズムは見えないが、 円盤の位置がずれれば穴の位置がずれるメカニズムと考える。 円盤の位置がずれるメカニズムが故障モードに繋がる 穴位置決めのメカニズムから故障原因を考える。 この絵から考える。⇒メカニズムを理解する為の見える化が大事 ウレタンゴムが貼ってありその摩耗等が位置決めに関連する シャフトボルトの緩みが位置づれに繋がる ダブルナットの緩みが位置づれに繋がる ・・・・・・・・・等、等、加工の原理、位置決めの原理、 ここから故障原因を探すことが大事である。 FMEAの帳票には、故障原因を記述する仕方として どのようなメカニズムで故障が発生するのか? そのメカニズムをFMEAには記述する事が大事である。 どのようなメカニズムで加工点にズレが生じるのか? これを記述するのが故障原因の記述である。 2023-04-07 次回に続く ![]() 8.現行の管理 今度は現行の管理の項目です。 FMEAはここでリスクを抽出します。 要するに前の段落の潜在的故障原因一つ一つに対して、 現状はどういう管理がされているのかを調査します。 潜在的故障原因の記述方法がここで効いてくる.。 潜在的故障原因の記述方法で正しく、その故障原因に至る メカニズムが記述してあることが大切です。 メカニズムが記述して有れば、調査もそれに関連する調査を探します。 FMEAの担当者はそのメカニズムから現行の管理を探す。 潜在的故障原因でネジの緩みが有り・・・位置ズレになる。 ネジの緩みはなぜ起きるのかを書くのがメカニズムです。 例えば、ネジの増し締めの仕組みが確立されてなく、 ネジ緩みが発生して、そこから位置ズレに繋がる。 そうすると、現行の管理では何を探しに行くのかと言えば、 ネジの増し締めの仕組みがあるかどうかです。 ここで肝心なのは、増し締め標準があるだけの確認では不十分です。 増し締め標準の内容をきちんと読むことが大切です。 本当にネジ緩みを管理できる仕組みであるか??? これをしっかり確認する事が大事。 肝心な事が手順には書いてありますか? 本当に実践できる仕組み? 一過性の物でなく、定着させる仕組みですか? 教育はしっかりされていますか?等々、徹底さが大事です。 9.改善
潜在的故障原因と現行の管理を比較して、 不十分なら改善します。 優先順位の高い順から改善していきます。 優先順位が低くても手順を作成して教育すれば良い等、 あまり費用も手間もかからないのであれば、 皆で手分けして改善しましょう! FMEAは難しい手法ではないので、 スタッフだけでの実施ではなく、 現場、現物で製造現場も参加して、どんどん活用して下さい。 大事な点は、現場、現物で、 設備や作業の構造、仕組みを良く理解して FMEAを大いに活用しましょう!!! FMEAの基本の説明は以上で終了です。 次回はFMEA第5版についても触れていきます。 2023-04-10 Hiroaki Amemiya ![]() ![]() 全く関係ありませんが、海はいいですね!海の近くで暮らせたら最高です。!! サーフィンでも趣味にして!! |
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